英語リスニング力を上げるには内容だけではなく「順番」が大事
前回音読のやり方を教えてくれてから毎日やってるよ
すごいじゃん!その調子で頑張っていこう。
じゃ、今回は1文単位ではなく、「音読する素材」全体での効果的な音読方法を教えるね
まずは下の音声を聞いてみて
・・・・・・
何となく半分くらい内容は分かったんだけど、細かなところはなぁ。
英文見て確認してみよっと
ちょっと待った!
たしかに英語を聞いて良く分かんなかったら、すぐにでも英文スクリプトを確認したくなるよね
でも、そのやり方だと英語力を伸ばすために必要な重要なプロセスを飛ばしてしまってるんだ。
次のセクションで私が実際にやってる練習方法を教えるよ
リスニング力を高める10個のステップ
実際に私がTED Talks をはじめ、映画・ドラマを使ったトレーニングをする際に行なっているトレーニングは次の10ステップ。
もちろん英語上級者の方で「こんなまどろっこしいことは必要なくね?」って方もいらっしゃると思います。
今回はどれだけ音読練習しても中々英語が聞けるようにならない、といった方にとって少しでも参考になれば幸いです。
特にステップ③、⑤、⑦が重要になってきます
① 英語だけで聞く
② ディクテーション (1)
③ 日本語訳をチェック
④ もう一度英語だけで聞く
⑤ ディクテーション (2)
⑥ もう一度英語だけで聞く
⑦ 英文スクリプトをみながら英語を聞く
⑧ ディクテーションの答え合わせと意味の確認
⑨ 音読練習 (リピート、オーバーラッピング、シャドーイング)
⑩ 最後にもう一度英語だけで聞く
ここからは順番に「なぜこれらの項目が必要なのか」、そして「どうしてこの順番がよいのか」についてお話しします。
① 英語だけで聞く
はじめての音声を聞くときは「毎回がテスト」と考えてください。現状、自分がどれくらい聞けているのかを確認する (己を知る) ことが英語力UPへの第一歩です。
また、1回では聞けなかった英文も2回、3回と繰り返し聞いていくうちに頭の中に落ちてくることがあります。
この状態であれば、あなたは英語の聞き取りができていないのではなく「情報処理に慣れていない」だけだと考えられます。
ご自身の状況を把握するために、必ず最初は英文スクリプトを見ずに何度も英語だけで聞いてみましょう。
② ディクテーション (1)
何度も英文を聞いてどのくらい聞き取れたかチェックを終えたら、次にしてほしいのはディクテーション。ここでは聞こえてきた英文を書き出していきます。
たとえば次の短い英文を書き取ってみましょう。
分からない音や単語があった場合、
She’s _________ some coffee …
のように空欄にするよりも、
She’s ぽーりん some coffee …
のように聞こえた通りの音を書いておくと聞こえた音と実際の発音の違いに気づけるようになります。
また、She’s ぽーりん some coffee … のあと coffee in two cup と書いたとします。
でも実際の英文は in two ではなく into
音だけを頼りにディクテーションをしてしまうと into も in two も同じように聞こえますよね。
ただ、2つを表す two であれば cup は cups と複数形になってないといけないはず。
でも何度聞いても cups とは言ってはおらず、cup と単数形になっている。
てことは、in two ではなく into だな、しかも cup は可算名詞だから冠詞の a があるはず。
冷静に考えてみれば文法的におかしいと判断できるようなことも、このディクテーションをやってるときは「音を聞き取ること」に全力を注いでしまうんで意外と正しく書き取れないことがあります。
その他にも前置詞の at が聞き取れてなかったり you’re が your になってたり…
細かな所に意識を向けた「精聴」トレーニングができると、実際にネイティブの会話を耳にしたとき意識しなくても自然と頭に英文が入ってくるようになります。
★She’s ぽーりん の答え合わせは、もう少しあとのステップ解説で扱います。
③ 日本語訳をチェック
この③のステップが私の学習法で一番の肝です。
なんで英文をチェックする前に日本語を確認するの?
たしかに英文→日本語の順番で見て理解力を確かめるのが王道だよね。
あくまでも我々日本人が中学校から「やらされてる」英語学習法ではw
相変わらず日本の英語教育をディスるねぇw
もちろん「英語の意味を確認 → 日本語訳で理解を確かめる」という王道のやり方でも問題はありません。
ただ、このタイミングで英語を見てしまうと「自分の力で英語を聞きに行く」トレーニングの機会をいくつか失ってしまうことになります。
1度英文を見てしまうと次に英語を聞いた時、「聞こえている気」になってしまいます。
この「聞こえている気」状態を防ぐために英文スクリプトを確認する前にひとまず日本語を見ることで内容は取れている状態に頭を持っていきます。
この状態で英語を聞いてみると、内容は理解できているので英語の細部を理解しにいこうとする脳に切り替わります。
ステップ①の段階では
(1) 英文の意味を理解しようとする
(2) 英語の聞き取りも頑張ってしようとする
という2つのタスクを一気にこなそうとしている状況です
初級レベルの方がトレーニングの段階で意味を理解しつつ単語の音を拾っていくというこの2つのマルチタスクをこなすのはかなりしんどいはず。
なので教室の生徒さんには必ず英文を聞き終え、ディクテーションまで終わったら日本語を見て内容を取ることをおすすめしています。
ウォームアップとして日本語内容を入れることで脳を覚醒させ、「英語が聞けている感覚」を作り上げる。これがこのステップを3番目に入れている目的です。
では最初に聞いてもらった英語トークの日本語訳を表示します。
<日本語訳>
おはようございます、皆様。本日は、防火安全訓練に関するお知らせです。明日の午前10時に、本社ビルで訓練を行います。訓練中は、避難手順に従い、正面入口付近の指定された集合場所に集まってください。実際の緊急事態発生時には、冷静に行動し、指定された消防係員の指示に従ってください。皆様の安全が最優先です。この訓練により、万が一の状況に備え、万全の準備が整えられることを確認します。ご注意いただき、皆様のご協力により、防火安全訓練が成功することを心より願っております。皆様のご協力に感謝いたします。素晴らしい一日をお過ごしください!”
どうだったでしょうか?
英語だけで聞いた内容と違いはあったでしょうか?
④ もう一度英語だけで聞く
現状、日本語で内容は取れているのであとは英語の聞き取りに集中すればよいだけですよね。
どうですか?ステップ①と比べてかなり聞けた情報量が増えたんじゃないでしょうか?
⑤ ディクテーション (2)
え?ディクテーションってさっきもやったよね?
なんで2回もやんの?
すごく良い質問だね。ステップ②でやったディクテーションはあくまでも「純粋な聞き取り能力」を測るためのテスト。
今回ここでやるディクテーションは日本語の意味のサポートがある状態になるんだ。
ステップ③で日本語を見ている状態なんで、内容は頭に入っているはず。
さっきの例文 She’s ぽーりん some coffee into a cup. の音声を日本語訳を見たあとでもう一度聞いてみてください。
日本語訳:彼女はカップにコーヒーを注いでいる。
最初は She’s ぽーりん some coffee into a cup. くらいで「ぽーりん」が何なのかまったく分からなかったのが、日本語に「注いでいる」とあるんで「注ぐ = pour 」という英語が出てくるかもしれません。
そうすると「あ、ぽーりんって pour に ing がついて pouring になってんだ」
と自力で英文を完成させることができるようになります。
ディクテーションをしていきなり英文を見て答え合わせをしてしまうと「自分の頭で単語を捻り出す」トレーニングの機会を逸してしまうことになります。
TOEIC® L&R テストの Part1 のセクションがなぜ解きやすいか?
答えは簡単。
「写真があるから」です。写真があることで「あ、今の英語の動詞ってこの写真のこの動作だよな」って感じで英単語を頭の引き出しから引っ張ってきやすいですよね。
今回の日本語 → 英語の順で聞いてみることで、この頭の引き出しから単語を引っ張ってくる感覚を養うことができるようになります。
⑥ もう一度英語だけで聞く
ここまでで自力で英語を「聞きに行く」感覚はかなり研ぎ澄まされてきたはず。では、どれだけ聞けるようになったか確認してみましょう。
うぉーーー、聞ける。聞けるぞぉーーー!
さっきは英語が早すぎて思考停止状態だったけど、今は「英語が聞けるようになってきた」気がする!
どうですか?ステップ①の時と比べて劇的な変化があったんじゃないでしょうか?
⑦ 英文スクリプトをみながら英語を聞く
ようやく英文スクリプトと対面だね
ここで初めて英文スクリプトが登場します。
このステップ⑦も私のトレーニングにおいてかなり重要な要素となってきます。
英語を聞いたあと、「えー、英文見たら全然理解できるじゃん」
なんて経験はありませんか?
この状態は英語が理解できていないわけじゃなくて「英語が聞こえていない」状態ってだけです。
じゃ、ゆっくり英文を目で見て理解できればそれでOKか?
そういう訳でもないんですよね。
ネイティブの発話スピードに合わせて、英文を目で追っていってついていけるか。
これが重要です。
ここでいう「ついていけるか」というのは単に目で追って行けているだけではなく、しっかりと理解できるというのが当然重要になります。
では下の英文スクリプトを見ながら音声を聞いてみてください。
★この段階ではまだ単語の意味などは調べたりしなくてOKです。あくまでも「音声スピートに合わせて英文スクリプトを読んでいけるか」に焦点を当ててください。
<英文スクリプト>
“Good morning, ladies and gentlemen. This is a reminder for all employees regarding the upcoming fire safety drill. The drill will take place tomorrow at 10:00 AM in the main office building. During the drill, please follow all evacuation procedures and gather at the designated assembly point near the front entrance.
In the event of a real emergency, please remember to stay calm and follow the instructions of the designated fire wardens. Your safety is our top priority, and these drills help us ensure that everyone is well-prepared in case of any unforeseen circumstances.
Thank you for your attention, and let’s all cooperate to make this fire safety drill a success. Your cooperation is greatly appreciated. Have a wonderful day!”
音声スピードは早いけど、日本語を見たあとだし何とかついていけた!
でも知らない単語はまだまだあるなぁ
このステップではそれでOK
⑧ ディクテーションの答え合わせと英文の意味チェック
今まで僕は最初に英語聞いてすぐにこのステップに来てたんだね…
道理で中々リスニング力が上がらないわけだw
ここまでの段階でかなりの箇所は潰せてるはずだから、あとは細かなところをチェックする感じだよ
リスニングトレーニングもいよいよ大詰め。
ここからは英文の理解力をしっかりと高めていきます。
ステップ②、⑤でやったディクテーションの答え合わせをします。
「ぽーりん = pouring」のような聞こえなかった音、前置詞の抜け、has been → is being などのような書き取りと実際の音声の違いをしっかりと洗い出していきます。
ディクテーションの確認が終わったら、しっかりと英文の意味を確認していきましょう。
⑨ 音読練習 (リピート、オーバーラッピング、シャドーイング)
意味を確認できたので、音読練習をしっかりとやっていきます。
リピートは1文ずつ止めて繰り返していくやり方。オーバーラッピングは英文の出だしから最後までピッタリ合わせていく (被せていく) やり方。そしてシャドーイングは話者が発話し初めて2秒〜3秒遅れで影のようについていくトレーニング方法です。
効果的なリピート音読のやり方に関してはこちらのブログ記事にまとめてあるのでぜひ参考にしてみてください。
⑩ 最後にもう一度英語だけで聞く
もう余裕だね〜♪
いかがだったでしょうか?
もちろん、すべてのステップを実施する必要はありません。今回のブログ記事が今後の英語学習の指標になっていれば嬉しいです。
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